マクダウェル作曲【野ばらに寄せて】ピアノ演奏難易度⑧

ピアノ発表会難易度別曲紹介

ニュアンスカラーがかわいいと感じる子どもにおすすめの曲

野ばら

演奏難易度⑧

マクダウェル作曲

野ばらに寄せて

 

素朴なメロディーが

美しい曲です

心が洗われるような

時がゆっくり流れるような

初めて聞くのに懐かしような

 

色で例えると

グレージュ

ブルーグレー

のような

中間色のイメージ

 

ちょっと大人の風味を味わいたい子どもに

ぜひ弾いてほしい曲です

 

アメリカ人なのに…

この曲を聴いてどのくらいの人が

「アメリカ人作曲家らしい曲だな」

感じるでしょうか

 

「アメリカ的」

というともっと

陽気でノリがいい

又は

感情表現がわかりやすいというか

…単純明快というか…

 

「わかりやすく」

楽しい

悲しい

怒ってる

先進的

というどちらかというと

刺激的な印象です。

 

ところがこの曲は

中間色的

懐かしい

そんな雰囲気です。

 

必ずしも

音楽がその人の民族的なルーツに由来するのではないけれども

 

この曲に関してはとても強く影響している気がします

 

マクダウェル(MacDowell)のルーツは

アイルランド系のアメリカ人

 

「Mac」がつく苗字といえば

ハンバーガーチェーンの

「マクドナルドMacDonald」

 

ビートルズの

「ポールマッカートニーMcCartaine」

 

俳優の

「スティーブマックイーンMacQueen」

など。

 

「Mac」というのはケルト系の地域によくある苗字で

「~の家族」という意味だそう。

 

マクダウェルは

父親がスコットランド系

母親がアイルランド系なので

家族の文化は

ケルト系の文化だったのだと思います。

 

この曲がアメリカというより

ヨーロッパロマン派風なのは

音楽の勉強をするために

10代のころからヨーロッパに留学していたので

その影響も多分にあると思いますけど。

 

留学を経験した人には共感していただけると思いますが

自分の国をでて、

異文化の中に入って初めて

自分のルーツというか自分の民族性を意識するということは

あると思います。

 

そういった意味でも

ヨーロッパでの生活によってますます

ケルト系をルーツにもつ

自分自身を強く感じたのではないかと

思います。

 

ケルト文化と日本の意外な共通点

この曲を聴いて

「懐かしさ」を感じる日本人は私だけかしら…

 

アイルランド、スコットランド、ウェールズ地方に分布するのがケルト文化。

 

神話や物語、伝説を通して歴史や自然信仰を大切にする文化。

自然が信仰や生活の一部になっています

そのあたり

ちょっと日本と似ている気がしませんか?

アイルランドは島国だし。

 

「野ばらに寄す」も

「森のスケッチ」という曲集の最初の曲です。

 

もうひとつ、この曲に懐かしさを感じるのは

この曲を支配している旋法のせいかもしれません

旋法については何度か触れていますが

現在クラシック音楽で使われている音階の原型みたいなもので

その曲をつくる材料になっている音の並びのことです。

 

ケルトの伝統的な音階は5音音階でこれは

日本のヨナ抜きと言われる音階と同じ

4つ目と7つ目を抜いた音階なんです。

 

この偶然の出来事も

この曲を懐かしく感じさせる理由のひとつかもしれません

 

ジョン・フィールドという作曲家

ショパンのノクターンをご紹介したときに

名前だけ登場したのですが

ケルト文化のことを書いた勢いで

以前からご紹介したかった作曲家をご紹介してしまいます

ジョンフィールドは

19世紀初頭のアイルランド出身の作曲家です

巷では

「ノクターン」

というとショパンのノクターン2-10を連想する人が多いとおもいますが

「ノクターン」というジャンルを確立したのは

ジョンフィールドだといわれています。

ジョンフィールドの音楽は素朴で繊細、そして内省的です

感傷的といってもいいのかな

穏やかな風景画のような印象です

特徴的なのが民族的な要素が旋律や和声に反映されていて

アイルランドの民謡が織り込まれていたりします。

こんな曲です

 

今回ご紹介した野ばらに寄すとは全く違う曲なのに

同じ匂いがしませんか?

 

マクダウェルは後にジョンフィールドの影響から

さらに民族的なものに傾倒し

アメリカ先住民やアフリカ系アメリカ人の民族的な音楽に多くの影響をうけます。

 

そこまで有名人作曲家たちではないけれども

時々ゆっくりした時間を持って聴きたくなる音楽です