ピアノ発表会レベル別曲紹介 中山晋平作曲【しゃぼんだま】演奏難易度1

ピアノ発表会レベル別曲紹介 中山晋平作曲【しゃぼんだま】

悲しい時どう表現しますか?

しゃぼんだま

演奏難易度①

中山晋平 作曲

しゃぼんだま

 

なつかしい響きの正体

「しゃぼんだま」は日本のペンタトニック(5つの音階)を基本としています。

前に何度か記事にしていますが

簡単に説明すると

ド、レ、ミ、ソ、ラの5音を使って曲が出来ているということ。

ファとシがないから47(ヨナ)抜き音階と呼ばれたりします。

半音を含まないので、独特の間(ま)や情緒を生み出します。

さくらさくら

荒城の月

津軽海峡冬景色

贈る言葉

千の風になって

涙そうそう

などなど、Jpop、演歌に度々使われています。

はじめて聴いても何となく懐かしく感じるのは

この音階の響きが私達に刷り込まれているからなのでしょうね。

 

「悲しいとき」どうしますか?

曲調が明るくて、言葉も母音の「あ」が多いので

明るく楽しい曲のイメージですけれども

実は作詞家野口雨情の

深い悲しみが込められているといわれています。

 

野口雨情は長女を生後わずか7日で、4女を2歳で失うという

大変悲しい経験をされていて

「しゃぼんだま」

は失った2人の娘たちへの鎮魂歌として

作られたとされています。

 

「うまれてすぐに、こわれて消えた」

という歌詞、

そう考えると胸がしめつけられる思いがします。

 

明治大正時代の日本では

乳幼児死亡率が高く、

同じような体験をした多くの親たちが

この歌に共感を覚えたのかも

 

日本の文化では

感情を控えめに表現することが美しいとされます

 

「悲しい」

「泣く」

「胸が張り裂けそう」

といった直接的な言葉を使わず

比喩、情景描写を通して感情を伝える文化

 

他人への気遣いから育まれた文化なのでしょうか

 

アメリカ的しゃぼんだま

時代が随分違うので単純には比べられませんけれども

エリック・クラプトンの

「Tears in Heaven」

も同じ背景をもった曲です

不慮の事故で息子さんを亡くされているんです

しゃぼん玉とは対称的に

歌詞の表現が

「I’m sad」や

「I’m heartbroken」

と具体的な言葉ではっきり表現しています。

 

説明なしでも状況が理解できるほど

明確な悲しみの表現

自己表現をはっきりすることで感情を共有し

関係を深めようとするのがアメリカの文化なのでしょう

 

ベートーベンの悲しみの表現

もうひとつ、

悲しみの表現の例としてベートーベンを挙げます

 

ベートーベンが「田園」を作曲した頃、

聴覚はほとんど失われていました。

 

音楽家として致命的な状況にもかかわらず

曲は明るく穏やかな雰囲気

 

なぜ深い絶望ではなく

このような表現ができたのでしょうか

ひとつの説としては

心の中で音楽を響かせ

自然の美しさをより一層感じられるようになったからだとか

 

悩みを抱えたとき

部屋にこもって考え続けると

悩みはますます深くなります

 

けれども

星空を眺め

宇宙に思いをはせると

自分悩みが広い宇宙や

悠久の時の流れのなかでは

ちっぽけな悩みに思えてくることがありますね

 

もしかすると

野口雨情とベートーベンは

そんな風に悲しみを乗り越えようとしたのかも

 

広い空に飛んでいくしゃぼん玉

川が流れ木が風にそよぐ美しい自然

 

それらは何かの比喩ではなく

「自分の悩みなんて小さいぞ」

と自分に言い聞かせる手段だったのかも

 

音楽はジャンルも時代も超えて

人の感情を載せているもの

ということは間違いない事実だと思います